MAID×BIRTH




様、コーヒーをお持ちしました」
「ん、サンキュ」
「落ちつかれないようですね」
「……当然だろ」

そうですね、と苦笑して遥はコーヒーをテーブルに置いた。
シナモンメッシュのストレートがさらさらと肩を流れる。
僕は白いカップに手を伸ばして、一口、その苦さを嚥下した。



彼女が僕を別室に呼びに着たのは、それから兆度二時間後の事だった。






僕の名は。都内でも有力な財閥の社長補佐役だ。
地主だった曽祖父が残した遺産もあって、祖父も父も事業を立派に継いだ。
無論、財閥一人息子の僕にはそれが全て託されたわけで――。
とはいえ、まぁまだ父も現役で代表取締役。僕はその補佐役に甘んじている。
第一、僕にはまだ経済に対しそれほどの知識も経験も興味も無い。
財産に囲まれて育ったにしては、我ながら謙虚な人間が出来あがったと思う。
別に良いのだ。その時になれば、それなりに人生進むんだろうから。

四代目の僕が今手にしているのは、祖父から直々に譲り受けた豪邸。
言うまでも無いが僕にはそれほど需要があったわけじゃない。
それでも、今現在、ここには僕と――何人かの女の子が暮らしてる。

つまり、メイド役、って奴だ。




メイドは全部で五人。
彼女たちは僕の身の回りの世話をする役目だから、いつも忠実に笑っている。
可愛い。五人それぞれ、正直言ってかなり可愛い。

僕は道を誤った。

何をしたかって――彼女らの一人と夜を明かし、…妊娠、させ、た。







部屋に入ると、ちょっとレトロな照明が暗がりを照らしていた。
入ってきた僕の後ろで、遥がドアを閉める。
「どうぞ、様」と一オクターブ高い声で勧められ、僕は足を出した。
部屋の奥にはベッドがひとつ。
その手前には白いテーブルが闇に映えていて、医療器具が置かれている。
黒髪の唯がこっちを向いた。
彼女の手を握り締めている、白い指が目に入った。

「御主人様、こちらへ」
唯に促されて、僕はゆっくりとベッドに近寄る。
近付くにつれ――耳に入る、苦しげな呼吸音。
僕は意を決し、ベッドをのぞき込んだ。



「御主人様よ。目を開けて」
恵が金髪を揺らしてベッドの中に囁いた。
恵の手は、ゆっくりと「彼女」の腰をさすっている。
そして「彼女」は薄い瞼を上げ、潤んだ瞳で僕を見た。

僕は、それに吸い込まれるようにして、名を呼んだ。

「凛」

紅潮した肌に、ウエーブがかった髪が少しまとわりついてる。
凛は僕を見て安心したように笑みを浮べ、右手を伸ばした。
僕は黙ってその手を握る。
痛いほど、彼女が握りかえす力は強かった。
「…
凛の口から僕の名が零れ、思わずドキッとする。
「…苦しいのか?」
…我ながら馬鹿な質問だと、言ってから思った…。
子供を産むんだ、苦しく無い筈が無い。凛は小さく頷いた。





「――ぁ…っ……!」
凛の口から何度目かの声が漏れた。
彼女の足元では、薫が色々と指示を出している。
「凛、無駄に息んじゃダメよ。痛みに合わせるの」
「だめ…痛い……」
「駄目じゃないわ、出来るから。ゆっくり息を整えて」
どうすることもできず、僕は内心おろおろと凛を見つめた。
握り締める手は強く、凛の綺麗な顔は汗で濡れている。
「ぁあっ…っ…、、…痛い…!」
「凛、…頑張って」




言いながら――僕は自分の下腹部が熱を持ってるのに気づいていた。
凛の、苦痛の表情とか、
震える吐息とか、
不可解なまでに膨らんだ腹部とか、
それを覆うメイド服とか、
そんなものに――僕は、今までに無く、…興奮してる。

「薫…もぅ、息みたい…我慢できなぃ…!」
「――良いわよ、思いきって。波に乗せるの、そうすれば、大丈夫」
「ぁ…っく……ぅぅっ…!!!」
凛が必死で力をこめる。
僕はドキドキしながらその様を眼に焼き付けた。
力をこめるたび、凛の腹部が緊張するのがわかる。
彼女の中では小さな胎児が、ゆっくりと、蠢いているんだ。
それを、凛の中の肉壁が、押し出す。
――そう。
狭い産道を通して、僕の血が混じった、小さな身体が――出ようと。

…なんて神秘だろう。

「うっ…ん、…ぁあ…!!」
「凛、声は控えて。力を入れることだけに集中して」
「ん…くぅ…っ!!!」
「凛…!」
恵や遥たちも、必死で凛を励ましている。
すると、唯が側に寄ってきて、凛に言った。
「もう頭が出そうよ。御主人様に取り上げてもらうんでしょう?」
「…うん…」
凛は、苦しそうに喉を開けながら、僕を見た。
…私の子を…一番に抱いて欲しいって…言ったの、覚えてる?」
……あぁ、そういや…そんなことを言われたっけ。
「お願い…。その手で、私との子をとりあげて。
私の中から出てくるのを――ちゃんと、見て」
「…凛」
の子供…産めるのが、嬉しいの…。
痛いけど――でも、熱くて…出口が…凄く、熱い…。
ぁあ…っ、早く…!」


どうしたことだろう。


凛の目が陶酔してる。


吐息が、甘い香りがする。




僕は凛の脚の方にまわって、其処を、目にした。
綺麗だ。
そう、正直に思った。
凛の其処を割って、もうひとつの頭が見える。
呼吸に合わせて其処が時折ひくっと痙攣するのが、嫌に艶かしい。
僕は無意識に、其処に手を伸ばした。
「ぁあっ…!!!」
凛が声をあげる。
思わず手をひっこめると、ゆっくり、其処の筋肉が緊張して、動いた。
「凛…凄い、よ。綺麗だ」
「……見える?子供…」
「見えるよ。凛のここから、頭が出ようとしてる」
「うん…!…ぁ、来た…!!、見てて。ちゃんと…」
凛は半ば叫ぶように言うと、思いきり息み始めた。
息むたび、其処が少しずつ開いて、頭を押し出そうとする。
「ぅうっ…ん……、―――ッ…!!!!」
僕の手に、温かい羊水と一緒に頭が押し出されてくる。
凛の息遣いはだんだん激しくなって、しきりに声を殺しながら力を入れる。
ちらと脚の向こうに目をやると、唯たちに囲まれている凛の表情。
苦痛に歪んで――それでも、物凄く綺麗な表情をしている。
する、と頭が出て、僕はしっかりとその感触を感じた。
濡れていて――温かくて。
それは間違い無く、凛の――「中」の熱…。
「凛、頭が出た」
僕の側でそれを見ていた薫が言った。
それを聞いた凛は、少し目を開いて僕に視線を合わせた。
「もうちょっとだよ、凛。頑張って」
「うぅ、んっ…!!!」
子供の肩が少しひっかかって、凛は苦しそうだ。
荒く呼吸を繰り返しながら、何度も下半身に力をこめる。
やがて片方の肩が覗いて――。
僕は先刻のように、其処に直に触れた。


「あ、…!!出る……!!!」


叫んだ直後、驚くほどするりと、子供が僕の手元に流れ出た。

思った以上にそれは重く、熱い。
呆然としながらも、僕はじっと手の中の命を見つめた。
「凛、…凛、生まれた」
やっとそれだけ言葉にすると、凛の弱い声が返って来た。
「…どっち?」
「女の子…」
「見せて…」
僕は臍の緒で繋がれたままのその子を、凛の胸に抱かせた。
凛は子供と対面して、笑った。
「…可愛い…」
「うん」
「……に似てる」
「そうかな」
「…この子…本当に私の中にいたんだよね」
「うん」
「……私の中で育って…私の中を通して、出てきたんだよね」
「うん、そうだよ」
「…ありがとう、。…大好き」

凛の頬を流れる涙を、僕は少しだけ舐めた。


それから、少しだけ、唇をついばんだ。――ありがとう、と込めて。








40000HITおめでとうございます。
趣向を変えて小説にしてみました。体験版というか、まぁ遊び心を込めて(笑)
それにしても、実際の場面をちゃんと見たことの無い私には、表現がすさまじく適当で…。
申し訳ない限りです;ビデオ見れる年齢になったら、勉強しますね(苦笑)
凛たちの御主人様になって、楽しんで頂けたら幸いです。

密椿



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